史料から読み解く湯川秀樹
封筒による湯川の緻密な整理
湯川秀樹は準備周到、極めて几帳面な人だった。研究面において、彼はすべてのものを大切に保存する。論文原稿、計算ノート、メモ、書簡、講演原稿、学会や講演のプログラム、あらゆるものを主題に分けて整理して保管した。
その保存、整理方法が面白い。彼は主に、自分宛の大きい茶封筒にその時々の書類を納めて保存した。封筒には毛筆の大きな字で例えば 「Internal Pair Prod. 1935」 と書き記されている。湯川は書道に長け、無造作に書かれた英語すら美しく光る。
封筒は時代を語る。例えば、史料 OU1935-A6 の封筒の宛先は 「大阪市 大阪帝国大学理学部 物理学教室 湯川秀樹様」 となっている。この時代、大阪市大阪帝大というだけで郵便物は間違いなく配達されていた。中之島の詳細な住所は必要なかったということだ。史料 OU1937-C6 の封筒にいたっては 「大阪帝国大学理学部 湯川秀樹様」 だけで東京から配達されている。
そのほか、史料 OU1935-A7 の封筒は自宅の「西宮苦楽園バス停留所前 湯川様」宛てのものである。史料 OU1936-C3 はアメリカの物理学会の論文誌(Physical Review) から湯川に送られた手紙の封筒だが、これも宛先は 「Dr. Hideki Yukawa Institute of Physics Osaka Imperial University Osaka, Japan」 となっている。
これらの封筒は、湯川史料の「封筒」カテゴリー(11点)にまとめられている。 文責: 細谷 裕 (大阪大学) |
史料 OU1934-A1
史料 OU1935-A6
史料 OU1936-C3 |