湯川秀樹博士原著の教科書を現代語で復刊 『湯川秀樹 量子力学序説』量子力学の真髄を克明に表現 2021年7月15日
【総合学術博物館湯川記念室からのお知らせ】
このたび、大阪大学総合学術 博物館湯川記念室では、土岐博特任教授(核物理研究センター)が中心となり、戦後すぐに発刊された湯川秀樹博士の『量子力学序説』を現代表記に改め、新版『湯川秀樹 量子力学序説』として組み直し、復刊しました(添付写真)。
まさしくいま、工学・生物学などの大変革の主役となるべき量子力学の本髄を克明に述べている教科書です。量子力学1は、20世紀の物理学・化学で中心的役割を果たしました。そして21世紀のいま、工学や生物学で主役になりつつあります。量子力学の成立当時に書かれた本書は、量子力学の概要を正確に把握するのに非常に適しており、理学はいうまでもなく、とくに工学、生物分野の学生・研究者に是非読んでほしい内容です。
多くの量子力学の教科書は、使う立場で書かれています。湯川秀樹博士の『量子力学序説』では、古典的な考え方を分析し、自然はなぜ量子力学に従っているのかを、博士自身が考え抜いて理解したことを、熱意を込めて学生に克明に語る構成になっています。自然の原理である量子力学は、社会や生物、宇宙の仕組みや成り立ちにおいて使われていないわけがなく、新しい飛躍のヒントがこの教科書の内容を熟読することで得られます。
本書は絶版となって久しく、現在の現役の量子物理の研究者ですら見たことのない教科書です。しかしその内容は現在の読者にとって相応しいものとなっています。学生・研究者がこの教科書から量子力学の本髄を理解し、その応用により、量子コンピュータ2、量子生物学3、量子統計数学4などの飛躍的発展が期待されます。
今回、土岐特任教授ら、大阪大学総合学術博物館 湯川記念室に設立した湯川秀樹『量子力学序説』復刊編集委員会では、1947年の初版以降に刊行された1957年の改訂増補版、1971年の新装版を底本として、旧漢字旧仮名遣いを新漢字新仮名遣いに、さらに一部の表記を現代式に改めるなど、現代表記に改めて新版を刊行しました。湯川秀樹博士が所持し、講義の都度使用していた初版と以降の増刷や改訂版をすべて保存している京都大学基礎物理学研究所と小沼通二氏(慶應義塾大学名誉教授)の協力も得て、博士が本にチョークなどで書き残していた加筆訂正等を参考に適宜修正を加えて出来る限り原著を忠実に再現しました。湯川秀樹博士手描きの図を活用し、自筆の改訂版序文の書き込みと初版の原稿も図版として一部収録しています。
みなさま、機会がございましたら是非ご覧になってください。
書名『湯川秀樹 量子力学序説』
湯川秀樹(著)
大阪大学総合学術博物館 湯川記念室 湯川秀樹『量子力学序説』復刊編集委員会(監修)
A5判 上製本 422 頁 ISBN978-4-87259-733-2
詳細は7月15日に配信されましたプレスリリースをご覧ください。
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