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坂田昌一のノート:「重量子と重粒子の相互作用」Note by Shoichi Sakata: Interaction among Heavy Quanta and Heavy Particles
OU1937-A5 (8ページ) 日付:なし
湯川と共同研究者の坂田昌一は論文「On the Interaction of Elementary Particles.II.」 を準備していた。この原稿はその論文のメインの節の下書きとして坂田昌一が書いたものである。(最終的な論文の第2節から第4節までの部分に対応する。)坂田も大阪帝国大学物理学科のノート用紙に原稿を書いている。面白いことに、坂田は日本語で原稿を書き、湯川はそれをもとに英語で原稿を書く。2ページ目、4ページ目には、湯川の英語の書き込みも記されている。坂田の字は活字体で、一字一字丁寧で非常に読み易い。湯川の筆記体とは対照的である。
坂田の原稿は論文原稿ではあるが、理路整然としていて、これだけでも優れたレビューとなっている。湯川は坂田のこのようなまとめを重宝したに違いない。重粒子(陽子、中性子)と重量子(中間子)の相互作用ハミルトニアンから、様々な過程を記述する行列要素を決め、それを用いて中性子、陽子間の交換力(湯川ポテンシャル)を導出している。さらに、高次(4次)の量子効果として陽子、陽子あるいは中性子、中性子間の力を計算している。湯川と坂田は重量子(中間子)として電荷がプラスとマイナスのものだけを想定していた。電荷がゼロの重量子(中間子)があることは、この段階では認識していなかった。(文: 細谷 裕)
史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s02-04-012)
OU1937-A5-s02-04-012