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講演原稿:重量子の理論についてTalk: On the Theory of Heavy Quanta

OU1937-A3 (8ページ) 日付: 1937年8月19日

理研(理化学研究所)での講演のための原稿ノートである。1ページ目は、原稿の形をとって問題説明、これまでの観測、理論の状況等をまとめている。口調も「小生も最近・・・」と半分喋り口調だが、原稿用紙にしたためる講演原稿とは違って計算の論理過程をまとめたメモとなっている。

考察の動機として、当時、宇宙線観測で見つかった電子と陽子の中間の質量を持つ荷電粒子を記述する理論の必要性と、もう一つ、原子核構造の解析に役立つ理論の構築を挙げている。湯川にとっては、この二つは同時に考え流べきものであった。まず宇宙線の粒子が物質中を通過する際のエネルギー損失過程の解析から始める。物質中のイオン化、輻射、原子核との散乱、原子核中への捕獲等を系統的に分析する。そのまとめ(3ページ目の後半)で、電荷が +e, -e 、質量は電子の200倍程度であること、さらにスピンが0か整数であると述べている。スピンが 1/2(半整数) である可能性をなぜ考えなかったのか、よく分からない。この時見つかっていた宇宙線の粒子はミュウ粒子でスピンは 1/2 であることが後に判明した。

4ページ目からは、上記の宇宙線粒子(重量子)の理論を作るには、もっと詳細なハミルトニアンから出発せねばならないとし、具体的に重量子の場(U場)と陽子・中性子の場との相互作用を書き下してその帰結を探っている。もし重量子場がスカラー場であれば、陽子と中性子の束縛状態である重陽子(deutron)の基底状態はP状態になってしまい、正しいかどうか分からないと述べている。現在では湯川の重量子(中間子)は擬スカラー場であることがわかっている。最後には、未解決の問題を列挙し話のまとめとしている。(文: 細谷 裕)

史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s02-04-003)
OU1937-A3-s02-04-003
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