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「ディラックの海」理論に関する考察Discussion on the theory of the positron
OU1935-B9 (21ページ) 日付:なし
ディラック(Dirac)の論文 Discussion of the infinite distribution of electrons in the theory of the positron, Proc. Camb. Phil. Soc., vol 30, 150, 1934 に関する批判的な考察である。ディラックはディラック方程式の負エネルギー解の電子の状態は全て占有され、そこにできるホール(正孔)がポジトロン(陽電子)として振る舞うとした。このとき、真空でも無限個の電子が詰まっていることになって、いろいろ問題が生じる。湯川はディラックの論文を丁寧に読み解きながら、正エネルギー解(電子)と負エネルギー解(陽電子)に対するハミルトニアンを設定し、量子力学の枠内でなんとかこの困難を解決しようと試みる。詳細な計算ノートである。現在では、場の量子化によりこの問題は解決されることが知られている。
この考察は、史料OU1934-B9「陽電子の理論について」の発展であり、1936年春の論文(史料OU1936-C1, OU1936-C2)「陽電子理論の密度行列」につながっていく。(文: 細谷 裕)
史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s04-01-020)
OU1935-B9-s04-01-020