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第67回物理談話会「金属の凝集力について」The 67th Physics Colloquium: "Cohesive Force in Metals"
OU1935-B5 (10ページ) 日付: 1935年12月19日
金属の結晶構造や金属中の電子の配位を量子力学の見地から解きあかそうとする。1925年から1926年にかけて形成された量子力学の基本方程式(シュレーディンガー方程式)から種々の金属の性質を理解する。電子がフェルミオンで、原子中の電子の軌道配位、そして多数の原子が集まってできる結晶の構造がいかに量子効果によって引き起こされる力で決まって行くか、物質の構造を理解するのに量子力学が本質的であることを物理学教室の仲間に解説している。金属の凝集力が量子力学の原理から説明できるのである。現在の物性論の基礎となることであるが、当時の日本ではわずかの人しか理解していなかった。
バレンス電子、自由電子の概念、スレーター(Slater)理論の説明からウィグナー-ザイツ(Wigner, Seitz)理論を詳しく説明する。7ページ目ではナトリウム(Na)や銅(Cu)中での電子の波動関数の振る舞いをウィグナー-ザイツ論文からコピーして描いている。(文: 細谷 裕)
史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s04-01-009)
OU1935-B5-s04-01-009