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論文草稿:素粒子の相互作用について IVFirst draft: On the Interaction of Elementary Particles. IV
OU1938-B6 (11ページ) 日付:1938年
これは、1938年5月28日の第18回日本数学物理学会大阪支部常会で発表された講演(史料OU1938-B5のプログラムを参照)に基づく論文の第1草稿であろう。1938年6月に書き出されたものと推定される。この手書きの草稿では、湯川、坂田昌一、小林稔3名が著者となっているが、論文の最終版(史料OU1938-B8を参照)では、武谷三男も加わって、4名が著者となっている。この草稿では、最終論文の第1節、第2節、第4節の一部、第5節の一部のトピックが議論されている。
湯川達は核力を媒介するボゾン(中間子)として電荷を持ったU粒子と中性のN粒子を考える。この頃、湯川達はU粒子、N粒子はスピンを持ったベクトル場であると考え、方程式、相互作用を書き下した。1938年ごろになると、ヨーロッパの著名な物理学者も湯川の中間子のアイディア(核力を媒介するもの)に大きな興味と敬意を持つようになっていた。特に、この草稿の下部の注釈で述べているようにケンマー(Kemmer)やハイゼンベルク(Heisenberg)が彼らの研究結果を、発表前に湯川に知らせてくれたことを湯川達は感謝している。その他、バーバ(Bhabha)、フレーリッヒ(Froerich)、ハイトラー(Heitler)、ステュッケルベルグ(Stueckelberg)など、多くの物理学者が核力の謎を解こうとしていた。(文: 細谷 裕)
史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s02-06-011)
OU1938-B6-s02-06-011