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論文草稿「メソトロンの質量と寿命」Draft: The Mass and the Mean Life Time of the Mesotron

OU1939-A1 (8ページ) 日付:1939年2月26日

湯川と坂田昌一との共著論文「The Mass and the Life-Time of the Mesotron, Proc. Phys.-Math. Soc. Japan 21, 138-140 (SN)(1939) 」の初期の段階での原稿である。この論文が書かれたとき、湯川が核力を説明するために導入したメソトロン(現在の荷電パイ中間子に対応)と1936年宇宙線観測で見つかった粒子(現在のミュー粒子)が同一のものか、異なる粒子なのかわかっていなかった。核力を媒介するメソトロンも不安定で、崩壊すると考えられる。湯川たちはメソトロンがベータ崩壊と同じような過程で電子とニュートリノに崩壊すると想定し、その寿命を計算している。一方、宇宙線で観測されている粒子の振る舞いから見積もられた寿命はそれよりも10倍以上長い。この違いをどう説明するか、湯川たちは様々な可能性を探る。現在では、パイ中間子はスピンが0のボゾン、ミュー粒子は電子と同じスピンが1/2のフェルミオンで、質量はパイ中間子の方が少し重いがほぼ同じであり、両方ともWボゾンを媒介にして電子とニュートリノに崩壊することがわかっている。ボゾンとフェルミオンの違いもあり、荷電パイ中間子の寿命はミュー粒子の寿命に比べて100分の1ぐらいになる。わずかの実験、観測データしかない時に、そこから粒子の正体と力(相互作用)の正体を突き止めようと壮絶な研究を繰り広げていたのである。(文: 細谷 裕)

史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (E10-020)
OU1939-A1-E10-020
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