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第144回物理談話会「宇宙線理論の近況」Lecture: Current Status of Theory of Cosmic Rays
OU1938-C2 (8ページ) 日付:1938年11月10日
11月10日に大阪帝国大学理学部大講義室で開催された第144回物理談話会での講演の原稿である。
湯川はちょうど2年ほど前の1936年11月26日に、この物理談話会で「宇宙線に関する理論の現状」の総合報告をしたことから話を始める。それ以来、実験、理論で著しい発展があり、宇宙線のシャワーが電子や光子らしいこと、ソフト成分とハード成分があること、ハード成分は電子と陽子の中間の質量を持つ「重い電子」らしいことなど、宇宙線の解釈が大きく変わったと述べる。
大気中でいかにこうした宇宙線シャワーができるか、特にハード成分(重い電子やバリトロン)の生成、エネルギー損失、吸収過程について、湯川自身のスカラー粒子の場合、ハイトラーのベクトル粒子の場合、そのほか、オイラー・ハイゼンベルグの理論を含めて説明している。物理談話会とはいえ、かなり高度な議論をしている。(文: 細谷 裕)
史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s04-05-003)
OU1938-C2-s04-05-003