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講演:素粒子の相互作用についてTalk: On the Interactions of Elementary Particles

OU1934-A3  (10ページ)  日付: 1934年10月27日

この日(10月27日土曜)、湯川は日記に「午後二時より三階小会議室で charged quantum の理論の話する。帰宅六時。」と記している。この時の講演原稿であろう。10ページにわたるが、決して完成されたものではない。自分が話そうと思うことを講演口調で書き連ねているが、途中からは考えあぐねてばつ印で削除したり、疑問符の数字が散らばる。

冒頭「先達お話したFermiのベータ線崩壊の理論は相当うまく実験を説明してる様に見えるが、この理論では中性子と陽子の相互作用を説明できない」と切り出す。電磁相互作用との類推を推し進め、中性子と陽子が新しい粒子charged quantumを交換し、クーロンポテンシャルの代わりに今でいう湯川ポテンシャルができると主張。5ページ目では、この新粒子にまつわる波長と力の大きさを質量欠損や散乱の速度依存性のデータから決めようとしている。新粒子charged quantumとは、今でいう荷電パイ中間子である。アナロジーに始まり、相対論的なクラインゴルドン方程式を解き、陽子、中性子との相互作用の形を決める、眩いばかりの講演である。(文: 細谷 裕)

史料提供:京都大学 基礎物理学研究所 湯川記念館史料室 (s02-030-009)
OU1934-A3-s02-030-009
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