第1回(10/17)の実践講義
超高圧
加賀山朋子(大阪大学基礎工学研究科)
「熱い氷」がある世界
 物質には、硬さや色、熱や電気の伝わりやすさなどの性質がありますが、それらを決める要因は何でしょうか。たとえば、鉛筆の芯に含まれるグラファイトは柔らかくて電気をよく通す性質があります。グラファイトは炭素原子が蜂の巣状に連なってできたシートが積み重なった構造をしています。炭素原子がピラミッド状(正四面体状)に結合すると、硬くて電気を通さないダイヤモンドになります。同じ原子でできていても構造によって性質が全く異なるのです。身の回りにあってよく知られている物質も温度や圧力などが違う環境のもとでは構造が変わってガラッと性質が変わります。この講義では冷やしたり圧縮したりして物質の変化を調べる物性実験研究のおもしろさをご紹介します。
 天気予報で日々みる気圧や気温の変化の範囲内でわたしたちは暮らしていますが、それは宇宙全体の中ではとても小さな地球表面に限られた“井の中”の環境なのです。技術の進歩で今では地球の中心と同じ環境でさえ実験室で作り出すことができ、そこでの物質の姿が知られるようになってきました。
 氷は冷たくて水に浮かぶもの、そんな“井の中の蛙”にとっての常識から自由になってみましょう。
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