第2回(10/24)の基幹講義
「量子の世界への旅立ち」
小林研介(大阪大学理学研究科)
量子力学の発見とその応用
  量子力学は20世紀前半に打ち立てられた、現代物理学の根幹をなす分野です。その基礎には、「物質は、波としての性質と粒子としての性質の両方を持つ」とか「エネルギーは連続的に変化するのではなく、飛び飛びの値になっている」などの驚くべき考え方があります。たとえば、電子は粒子のように振る舞うこともあれば、波のように振る舞うこともあるのです。これは、それ以前の物理学とは全く異なる考え方で、私たち人類の自然観に大きな変革をもたらしました。
 量子力学はどのようにして発見され、どのように発展してきたのでしょうか。今回の講義では、人類がどのように量子力学を発見したのか、お話しします。そして、現在、ナノテクノロジー等を利用して、人類がどのように量子力学を応用しつつあるのか、分かりやすくご紹介します。
 図は、ナノテクノロジーを利用して半導体上に作られた直径約500ナノメートルの「電子干渉計」の原子間力顕微鏡写真です。このような極小の電子回路を用いると、電子が「波」として干渉する様子を直接に観測することができます(電子の運動方向を白い矢印で表しています)。ちなみに、この回路は、皆さんのパソコンやスマホの画面上では数センチ程度の大きさに見えていることでしょう。500ナノメートルのものを、このサイズに拡大するということは、一円玉の直径を、約1キロメートルに引き伸ばしたことと同じになります。この回路がどれくらい小さいか、思いを巡らしてみてください。
量子力学の発見とその応用


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