第2回(10/25)の基幹講義
「量子の世界への旅立ち」
小林研介(大阪大学理学研究科)
原子を見つめる、原子をあやつる
 量子力学は20世紀前半に打ち立てられた、現代物理学の根幹をなす分野です。その基礎には、「物質は、波としての性質と粒子としての性質の両方を持つ」とか「エネルギーは連続的に変化するのではなく、飛び飛びの値になっている」などの驚くべき考え方があります。たとえば、電子は粒子のように振る舞うこともあれば、波のように振る舞うこともあるのです。これは、それ以前の物理学とは全く異なる考え方で、私たち人類の自然観に大きな変革をもたらしました。
 それでは、量子力学はどのようにして発見され、どのように発展してきたのでしょうか。今回の講義では、人類が「原子を見つめる」ことによって、どのように量子力学を発見したのか、お話しします。そして、現在、人類が「原子をあやつる」ことによって、どのように量子力学を応用しつつあるのか、分かりやすくご紹介します。
 図は、ナノテクノロジーを利用して半導体上に作られた「人工原子」の電子顕微鏡写真です。大きさは、100 nm程度(1 cmの10万分の1くらい)のこの素子の中に、電子を一粒ずつ閉じ込め、電子の持つ電荷やスピン(磁石の起源です)などの性質を自由にあやつることができます。
人工原子で電子をあやつる


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