第5回(11/12)の基幹講義
「物質の世界への旅立ち」
鈴木義茂(大阪大学基礎工学研究科)
ナノ磁石の不思議な世界
 永久磁石の力は衰えることなく、いつまでも他の磁石や鉄釘などをひきつけます。この力の源は"スピン"と呼ばれる小さな電荷の粒の回転運動にあります。この粒の実体は、負の電荷を持ち原子核の周りを公転運動している電子です。永久磁石の中では無数の電子が独楽のように自転することによりそれぞれが小さな磁石になっています。この回転運動は衰えることのない永久運動なので電子は一つ一つが完全な永久磁石です。この無数にある小さな磁石の向きがそろうとその物質は磁石になります。さて、電子は金属中を流れて電流となりますが、最近、自転の向きをそろえたまま電子を流すことが可能になりました。これは、いわば小さな磁石の流れであり、「スピン流」と呼ばれます。講義では、スピン流が回路になっていない回路を通してエネルギーを供給することができたり、絶縁体中でも伝わること、さらにはこれを用いた次世代の不揮発メモリーの開発が進んでいることなどをお話しします。
図1.(a) 原子の模型.正の電気を持つ原子核の周りを負の電気を持つ電子が回転運動している.(b) 電子はそれ自体自転しており永久磁石になっている.
図2.小さな磁石の流れ(スピン流)とスピン拡散長.
図3.(a)スピン注入の概念図.(b)注入されたスピンとの相互作用により右側の強磁性体内部の小さな磁石はすりこぎ運動(歳差運動)を始める.この歳差運動は次第に大きくなり逆立ち独楽のようについには磁石の向きが反転する.
原子の模型とスピン

スピン流とスピン散乱長

スピン注入とスピンの歳差運動


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