第3回(11/1)の基幹講義・特別企画
「物質の世界への旅立ち」
夛田博一(大阪大学基礎工学研究科)・白川英樹(筑波大学名誉教授、2000年ノーべル化学賞受賞)・廣木一亮(津山工業高等専門学校)
- SAP10周年特別企画 -
高分子有機発光ダイオードを創ってみよう
 身の回りには、有機分子からできたモノがたくさんあります。ボールペンやシャープペンシルの外筒、下敷き、メガネのフレームやレンズ。これらはプラスチック(合成樹脂)とよばれる高分子からできています。ペットボトルのペット(PET)もポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate)という高分子を材料としています。このような合成樹脂の多くは電気を流さないモノ(絶縁体)がほとんどで、そのため高分子をはじめとする有機材料は電気を流さないモノと思われがちです。
 有機材料は、上に示した例からも判るように、軽くて、折り曲げができ、水や薬品に強いという特徴を持っています。そうした有機材料に電気を流すことができれば、軽くて身につけることのできるコンピューターや携帯端末が実現できます。ここ10年ほど、そういった研究が活発に行われ、いくつかは実際に販売されるまでになりました。
 そのひとつが、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)素子(有機 EL 素子)と呼ばれるモノで、非常に高速で高精細な表示が可能なことから、スマートフォンのディスプレイや、大画面テレビに使われています。この素子は、マイナスの電荷を持つ電子を運びやすい有機材料とプラスの電荷を持つ正孔を運びやすい有機材料を張り合わせ、そこに電気を流すことで発光がおこることを利用しています。
 今回は、その原理を紹介するとともに、その素子を実際に創ってみましょう。慎重に丁寧に作製すると、きれいな発光が確認されます。それが集まってディスプレイができあがっています。実験を通して、また、発光を見ながら、こうしたエレクトロニクス研究が我々の生活をどのように変えて行くか、想像してみてください。
有機 EL 素子


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