カーボンナノチューブ
   炭素(カーボン)材料の研究・応用には長い歴史があります。たとえば皆さんもよく知っているダイアモンドは炭素原子でできており宝石や工業用研磨材としてすでに利用されています。もう1つ有名なものにはグラファイトがあり、携帯電話などに使われる電池の中で重要な役割を果たしています。
 長い歴史があるだけに、口の悪い人の中には「炭素研究はもう古い」という人もいました。しかし1985年のC60(フラーレン)分子の発見という歴史的偉業により炭素研究は新しいステージ、即ちナノカーボン研究へと昇華され、炭素研究はまったく古くなくなったのです。ついで1991年にはカーボンナノチューブが日本人の飯島博士により発見され、その特異な性質から様々な方面における研究・応用展開が期待されています。さらに2004年には、やはりナノカーボンの仲間であるグラフェンがある意味で「発見」され、固体材料の中で、あのアインシュタインの提唱した特殊相対性理論が成立する非常に興味深い材料系であり、非常に大きな注目を集めています。
 この講座ではカーボンナノチューブ、及びその仲間であるフラーレンやグラフェンなどの分子材料の持つ特性を紹介しながら、これらの材料の発見にまつわるドラマティックなエピソードや、幾何学・相対論との対応などを簡単に紹介し、現代材料科学の最前線のトピックをわかりやすく解説したいと思っています。