量子の世界への旅立ち
 身のまわりには、動物、植物、鉱物など、有機物、無機物からなる性質の全く異なる「物質」が無数にあります。これらの物質の大部分が、わずか数十種類の元素の組み合わせだけでできていることを不思議に思いませんか? 実は、物質の性質を決めているのは、元素の種類だけでなく、それらがどのように結びついているか、その「糊(のり)」の役目をしている電子のミクロの世界での振る舞いが決定的な役割を演じているのです。電子はマイナスの素電荷を持った粒子ですが、ミクロの世界ではの性質が強く現れます。 楽器のギターや笛で分かるように、弦や筒の長さで音の高さ(振動の波長)が決まり、オクターブ毎の飛び飛びの波長を取ります。原子でも同様に、中心の核の回りを取り囲んで回っている電子もまた波の性質を持つため、電子の軌道に沿った波が一周したときにうまく干渉し合って強めあう場合のみ波が生き残りますので、電子も飛び飛びの波長(飛び飛びのエネルギー)を持ちます。これこそが、量子力学が描く「エネルギーが飛び飛びになる」ミクロの世界の性質なのです。物質中で「糊」の役割を演じる多数の電子も飛び飛びのエネルギーが集まって束(エネルギーバンド)を作りますが、この束の作り方によって、様々な性質が生まれるのです。
 ここでは、電子と光のキャッチボールにより電子の放つ光の色を観察できることを使って、ナノメートルサイズの半導体微粒子の大きさを変えると、その中に立つ電子の波長が変化し、電子の放つ色が変わるという、量子力学の世界の醍醐味を垣間見ようではありませんか。