ミクロの世界の電気伝導 - ナノテク・ナノサイエンス入門 -
 私たちのまわりには電気の力で動かしている電気・電子機器やデバイス(素子)がたくさんありますが、共通していることは、そこでは電気は必ず「導線」を流れる、ということです。例えば、電気掃除機など電気機器の電源コード、携帯用ミュージックプレイヤーから出てくるヘッドホンのコード、パソコンや携帯電話、ゲーム機など電子機器の部品の中の配線、などを電気が流れ、たくさんの仕事をしています。この場合、同じ長さや同じ太さの導線を用いれば、その導線をどのように曲げようとも電気の流れ方は基本的に同じです。これは、どうしてでしょうか? 実は電流の担い手である「電子」は導線の中を何回も跳ね返りながら動いています。跳ね返る間の距離に比べて、導線の大きさが十分に大きければ、電子は導線の曲がり方を直接には感じないため、電流の流れ方は変わりません。このような電気の流れ方を支配している法則は、「オームの法則」と呼ばれており、現在の電気・電子機器やデバイスはほとんどこの法則に基づいて設計され、動作しています。
 ところで、ナノテクノロジーの進歩により、私たちは非常に小さな加工をすることができるようになりました。ある種の「導線」で回路を作った場合、大変小さな−たとえば髪の毛の太さの100分の1程度の大きさで回路を作った場合でも、電気の流れ方は同じでしょうか?それとも?・・・・・これがこの講義でお話しするテーマです。