第3回(10/31)の基幹講義
「物質の世界への旅立ち」
鈴木義茂(大阪大学基礎工学研究科物性物理科学)
小さな磁石の不思議な世界
 人類は紀元前から永久磁石を利用してきました.でも、その磁極(N極、S極)の向きを自由に変えることが出来るようになったのは19世紀に電磁石が発明されてからです.コイルの中に鉄くぎを入れていったん電流を流すと、くぎを取り出しても磁石になっているのを見たことがあると思います.電流の向きを逆にすれば鉄くぎのN極の向きを逆にすることもできます. 
  そこで、磁石になる材料で円盤を作り、小さなコイルでその表面に自由にミクロな磁極のパターンを描けば高密度な磁気記録をすることができます.これが家庭用のビデオレコーダーにも使われているハード磁気ディスクです.
 さて、最近では磁気記録の高密度化が進み、ウイルス程度の大きさ(100 nm前後)の磁極の向きを制御することが必要となりました.すると、コイルの作る磁界を用いるよりも、磁石材料に直接、電流や電圧を加えたほうが効率よく磁極の向きを制御できることが分かってきました.これは電流を運ぶ電子自体が小さな磁石だということ起因します (図1).電気と一緒に磁石が電線の中を流れるナノの世界の不思議についてお話しします (図2).
図1
図2


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